~親に会えない子供をなくそう~
目指すは南米最南端、パタゴニア1000km徒歩チャレンジ!

HOME > チャレンジの記録 > No.10 ウシュアイア、最南端の町へ

2015.12.27

いつの間にか寝ていたらしい。トイレに行きたくて目が覚めた時には午前4時になっていた。
降ったり止んだりを繰り返していた雨もやっと上がった様子。

東の空を見ると薄っすらと明るくなりかけていたが、反対側を見るとまだ満月が輝いていた。
その月を観ながらワインを一杯。

今使っている Doite の Solo Especial ってモデルがそうなのか、それとも中古だからかなのは分からないが、雨が内側に浸透してくるのでシュラフ(寝袋)の表面がかなり濡れてしまっている。それでも内部まで水分は来ておらず、温かさを保ち続けてくれるのは有難い。撥水仕様モデルで助かった。
日が出るのを待って岩の上などでシュラフやテントの内側などを乾かしてから出発することにした。

テントを張っていたのはファグナーノ湖畔。昨日は17kmしか進めなかったので今日の目標は33kmとする。

出発直後、ディクソンの動きが重かったので車輪のネジを緩めてみたが、そうすると今度は逆に外れそうになり難しい。ちゃんとした部品があれば締めるだけなんだろうけど。

7kmほど進んだところでトイレをしていたら道の方から「Ko!!」と呼ぶ声が。
戻ると一日後に出発したジャン・クロードが追いついてきていた。やはり徒歩と自転車では移動速度は段違いだ。
ジャン・クロードはまた会おうと言ってウシュアイアのおすすめ宿を教えてくれた。

10km歩いて休憩を2回繰り返し、20km進んだ頃には16時半を回っていた。
というのもやはりディクソンのネジの調子が悪い。何度も調整したが、歩いていると車輪の回転で勝手にネジが締まり過ぎる(=抵抗が増えて激重になる)ことが続くので、思い切ってかなり緩めにした。その代わりネジの脱落リスクが高くなるのでほぼ100m毎に目視で確認しながら進む。

雪を頂いた山が段々と近くなってきた。

歩いていると横で一台のバンが停まった。見ると何時間か前にも一度停まって「乗らないか?」と声をかけてくれたアジア系の男性たち。徒歩で最南端の町まで向かってるんでって話をしたはずなのにと思っていると、水やクッキーやミカンをくれて、さらにウシュアイアでスーパーをやっているから町に着いたらウチに泊ればいいと名刺の裏に住所を書いて渡してくれた。彼らは台湾の人らしい。名刺は濡れないようにビニールで包み、ポケットに大切にしまった。

またしばらく進み、橋を越えたところにあった湖畔のレストランも過ぎてさらに先。Tolhuinの町から46km地点、キロポストでいうと2999km地点からはちょっとした村になっている。その村外れ、ティエラ・デル・フエゴ州の州旗を立てている公共施設が旅人を泊めてくれると以前ここを旅した人のブログに書いてあったので行ってみたが、盗難事件が起こったので以後泊めることが出来なくなったと告げられた。

残念だけど仕方が無い。どこかで野宿するかと場所を考えていると幸運な出会いが。
親切な人っているもんで、特別に空いている部屋に泊らせてもらうことができた。

夕食はやはり今日もパスタ。雨を心配することなく、屋根の下で眠れるという幸せ。

2015.12.28

この1,000kmチャレンジはパイネを一周する前半戦、そしてパイネからウシュアイアに向かう後半戦で構成されているが、今日は後半戦のスタートからちょうど30日目。ゴールと決めていた最南端の町ウシュアイアまではあと2日の行程だ。

川があって山がある。村の風景としてはなかなか良い。

ちょっとカッコいいルート3の道路標識。

村を出てすぐのところに3000kmのキロポストもあった。

パイネトレッキングの時にも見かけたオレンジ色の物体。以前調べたがダーウィンも食べたキノコの一種だとかで、Pan de Indio という名前らしい。どんなもんか齧ってみるとプリッとした弾力のある食感でゼラチン質。味は特に無かった。

肩の荷を下ろして少し休憩。この靴はトルウインでもらったもの。
爪先の方に穴が空いているので雨が降ってきた場合は中にビニール袋も履く。

今日は峠越えなので道はスタートからひたすら上りが続く。

7kmほど歩いたところで湖を見渡せる絶景ポイントがあった。
距離的にはまだ休憩するところではないけれど、せっかくなので腰を下ろして休むことに。
毎日食べまくっているので、もらったパンもたいぶ減ってきた。

結局下の村から10kmほど上り続け、やっとこのガリバルディ峠を越えることができた。

この周辺はいたるところ上から水が流れているので時折ペットボトルに汲んで飲んでいたが、途中で水に触れている部分の石が赤茶色に変色しているのに気付いて飲むのをやめた。特別鉄分が多いような味じゃなかったんだけど、念のため。

本日のスタートから20km地点。ちょうどレストランやロッジなどがある HARUWEN というところだったので休憩しようとした矢先、向かいから来た車が僕の目の前で停車した。降りてきたのはなんとお世話になった La Union のオーナー、エミリオ!
家族でウシュアイアに出かけた帰りのようだ。

最後にありがとうを言えなかったのが心残りだったが、まさかこんなところで会えるなんて。思わずハグした。

この辺はもう完全に森林地帯。

珍しくトラックが停まり、バナナをくれた。

途中第20回インタースキー(世界スキー・スノーボード指導者会議)の会場があった。
重機が動いていたので造っているところかと思ったが、どうやらすでに終わっていたみたい。
看板の屋根の下で小休憩。立派な屋根なので泊るのにも良さそう。

動いてはいないがリフトもあった。

19時前。赤黄緑とカラフルな平原の奥に雪を頂く山々が見える景色の美しい場所があったので、予定には3kmほど足りないけれど今夜はここに泊ることにした。小雨がパラッときたがこれくらいなら大丈夫。

今日進んだ距離はおそよ34km。残り20kmほどのはずなんで、明日はいよいよウシュアイア。

2015.12.29

アラームで4時に起床。
テントは上にビニールシートを被せていたのに内側が濡れていたので結露かも知れない。シュラフにも水分が付いている。
それでもテント無しの日々に比べれば夜の不安はかなり少なくなった。

紅茶だけ作り、パンにチーズとサラミを乗せて朝食にする。

朝の眺めが素晴らしかったので撮ってみた。
右下に写っているのがトルウインでもらった Doite の一人用テント。

7時頃出発。この辺りは本当に景色が良いのにみんな素通りとはもったいない、なんて思っていたら宿泊施設があった。
そりゃあそうか。

昨日逆方向から来たドイツ人カップルに聞いた通り、今日の行程は上りよりも下りが多くて結構楽だ。
まずは10kmほど快調に進み、このペースなら今日はかなり早く着くんじゃない?と思っていたら、突然……

ディクソン号を引いていた手に違和感を感じ足元を見ると、そこにはポッキリと折れたネジが!

ナットが外れて脱落する可能性は想定していたけれど、まさかネジそのものが折れるなんて。
しかもこのタイミング。最終日をすんなりゴールさせるまいと誰かが演出でもしているかのようだ。

とりあえず工具を出して予備のものを嵌めてみたが、これはナットとのサイズが微妙に合ってないのでいつ外れても不思議は無い。極力衝撃を与えないよう段差に気を付け、注意に注意を重ねて進んでいく。

キロポストでいうと3049km辺り、しつこいくらい目視確認を繰り返して進んでいると……

カーブの先から突然「USHUAIA」の大きな文字と、建物群が目に飛び込んできた!

時間はまだ12時半。予想よりも10kmも近かったんで最初はただビックリ。

そして数秒遅れて、とうとうゴールしたんだという静かな喜びの感情が押し寄せてきた。

普段一人旅に慣れている僕でも、こういう瞬間くらいは感情を爆発させて共に喜びを分かち合える仲間がいれば良かったな、なんて思う。

ついに到着した南米大陸最南端の町、ウシュアイア。
そしてここまで一緒に歩いてきた相棒のキャリー・ディクソン。

と、その時。通り過ぎるトラックから「やったな!」と言わんばかりに親指を立ててサインを送ってくれる人が!
続いて軽くクラクションを鳴らしながら拍手をして通り過ぎる車も!

そういえば午前中も何台か、すれ違い様に笑顔でハンドサイン送ってくれてたな、と思いだす。
そうか、あれはゴール目前の僕を祝福してくれていたのか……。

検問所を通り抜け、海沿いの道から町の中心部へ向かう。
対岸に見えるのはおそらくチリのナバリノ島。

町の入口からがまた結構遠い。
旅行者向けのホステルが集まっている中心部までが距離にして7kmほど、僕が訊ねるスーパーはさらにその数km先にある。

港にはアルゼンチン海軍の船や民間の貨物船、もちろん客船も。様々な船が停泊している。

2時間以上歩いてやっと町の中心部までやってきた。ここウシュアイアの名物、カニ料理の看板も見える。

歩いていると向こうから来た男性に呼びとめられる。誰!?と思ったらウニオンで働いていたセバスチャン。
今日は休みなのでヒッチハイクで遊びに来たらしい。せっかくなので一枚撮ってもらった。

ウシュアイアの町は山を背にしているのでとても坂が多い。
まだ行ったこと無いけれど、ヨーロッパアルプスの町ってこんな雰囲気なんじゃないかと思う。

中心部を越え、湾沿いにさらに町の奥へと進むと観光客はあまり来なさそうなローカル住民の居住する地区があった。
La Victoria には夕方の17時頃到着。ここは従業員もほぼすべてアジア系。店内に入ると昨日名刺をくれた台湾人の宋さんが出てきて、こっちだよと近くの一軒家に案内してくれた。

普通に家族で暮らしてるところにお邪魔するのかと思っていたが、なんとそこは空き家。
いくつもある部屋はガランとしてすべて空いていた。

トイレも流れるし電気も点くから自由に使ってということで、日当たりの良い部屋を選び荷物を置かせてもらう。
宗さんは「出ていく時に返してくれればいいから」と僕に鍵を渡してまた仕事に戻って行った。

画像に写っているパンや水などは宗さんの親族らしきスーパーのオーナー(?)が好意で持たせてくれたもの。

少し休憩した後、辺りを歩いてみることにした。

スーパーまで来る途中に見かけた工具類を扱う店で車輪部分を見てもらい、ネジやナットを新しくしてもらった。
熱心にやってくれたのに手数料をほとんど取らず、ほぼ部品代のみととても良心的。

帰りに Victoria に寄って晩の食材を買う。キッチンは使えないので肉を焼けないのが残念。

それでも達成祝いの夜なので、チーズにハム、ワインとビールも用意した。

静かな部屋で一人ビールを飲みながら考えた結果……
明日、ここからさらに先のラパタイア(Lapataia)に向かうことに決めた。

最南端の町まで、ということでウシュアイアをゴールにするのも区切りが良いが、ルート3の道自体はまだもう少し続いている。せっかくここまで来たのなら、その道の果てまで行って損は無い。

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