~親に会えない子供をなくそう~
目指すは南米最南端、パタゴニア1000km徒歩チャレンジ!

HOME > チャレンジの記録 > No.9 クリスマス in パタゴニア

2015.12.23

昨日の雨が嘘だったかのように空が明るい。
暖炉で乾かしていた靴は先が一部焦げて(恐らく最後に足してくれた薪で火力が強くなりすぎた…)いたが、フラビオには感謝しかない。靴下その他の物は程よく乾いており、段ボールも底が濡れてしまっていたのでフラビオが別の物をくれた。

マテ茶も初体験。
金属製のストローは濾し器の役割も果たし、1つのものを回し飲みするのが作法。

マテ茶専用の器と湯を入れたポットを持つフラビオ。アルゼンチンの人はよくこのセットを持っている。
それにしても写真の白飛び具合がひどい。

知っているだけのスペイン語でフラビオに感謝を伝えて9時前に出発した。

歩いていると車が停まり、声を掛けてきたおじさんにチョコをもらった。
おじさんは一緒に写真を撮りたかったようで、並んで撮り終わると「じゃ!」といって去って行った。

他にも何度か走っている車から笑顔で手を振られるなど、それはこれまでもあった事ではあるんだけど、今日のは何となくこっちのことを知っていたような感じがする。もしかして先日ブライアンに取材された内容が何かに載ったのかも…?

11時頃、噂のパン屋「ラ・ウニオン」(英語だとユニオンだけどスペイン語の場合発音はウニオン)の案内板を発見。

休憩中。左が焦げてパリパリになっているので爪先がちょっと痛くなってきた。
ここからはクロックスもどきに履き替えて歩く。

女子で一人旅をしているサイクリストは珍しい。彼女はオランダの人でこれから北上していくところ。

昨日一昨日くらいから丘のアップダウンが増え、何も無い草原から徐々に木が生えている景色に変わってきた。
今日はもう10mを超す高さの木も見かけるようになり、久しぶりに雪を頂く山々も遠くに見えた。

16時頃出会ったのは柔術を習っているというマッチョガイのエダー。
彼はブライアンから僕のことを聞いていたようで水と林檎をもらった。

徒歩の移動は時速4km前後。他の移動手段に比べると圧倒的に遅いので、例えば自転車なら一日で走る町と町の間を3日程かけて歩く。時間がかかる分、他の人よりも多くの食料や水を持ち歩く必要があるため、好意で水や食料をもらうことも多い。

アルゼンチン領に入ってから町の出入口で検問所を見かけるようになった。パスポートのチェックがあったり話を聞かれたりするけど特に問題はない。

21時頃やっとトルウインに到着。ここはリオ・グランデとは真逆の小ぢんまりとした町で良い感じ。

とりあえずガソリンスタンドを見つけたので例のパン屋さんの場所を聞こうと寄ってみたら、なんとそこで朝別れたはずのフラビオと再会!一瞬「ワープ!??」と思ったが、トラックに乗せてもらってちょくちょく来るらしい。僕が無事到着したことを喜んでくれた。

噂のパン屋 La Union(ラ・ウニオン)に行ってみると、イメージしていたよりも広くて近代的な店。スタッフもたくさんいる。21時を回っているので片づけているところだったが、かろうじてまだ開いていて助かった。
スタッフはまだ数名残っているお客の対応をしたり掃除をしたりと忙しそうだったので誰か責任者っぽい人は……と探していたらカウンター奥の部屋にいたおじさんと目が合った。

目が合うなりおじさんはこっちに来いと手振りをするので、カウンター内に入らせてもらう。そして「自転車旅ではないんだけど、徒歩でウシュアイアまで向かっている途中で…」と説明しだした僕の話もそこそこに、くるりと背を向けて付いてこいと歩きだした。

裏口から出ていったおじさんに付いて道路を挟んだ向かいの建物に入ってみると、倉庫になっているその建物の入口付近に扉があり、開くとそこが旅人のための部屋になっていた。夕方に会った柔術マッチョのエダーとも再会。とりあえず部屋に荷物を置き、また連れられるままに調理場のようなところへ。おじさんはそこにいたスタッフの女性に何か指示すると「じゃまたな」という感じで行ってしまった。

去る前にかろうじて「Muchas gracias !!(ありがとうございます)」だけは伝えたものの、対応があっさり過ぎて予想外。でも考えてみれば毎日噂を聞いて誰かしらやって来るとしたら、これが彼の日常なんだろう。

で、その調理場にいた女性スタッフが焼いてくれたのがこのエンパナーダス。餃子のように肉や野菜の具をパン生地で包んで焼く。コーヒーと一緒に頂いたけれど、さすが焼き立て。とっても美味い。8つ全部食べたらさすがに満腹になった。

部屋にあった3つのベッドは埋まっていたのでマットレスを出してもらい、そこにシュラフを伸ばして就寝。

2015.12.24

8時過ぎに起床。ベッドのある部屋では使えないが、隣の棟にいけばwifiも自由に利用可ということでさっそく使わせてもらう。同じくここにお世話になっているアルゼンチン人のコンサがもらってきた袋一杯の菓子パンもみんなでつまんだ。

ここで飼われているちびのシモン。彼はとても可愛いんだけれど…

エンパナーダスの作成中。作り方も餃子みたい。

店舗の方の裏方は男性ばかりだが、こちらの離れは逆に女性ばかり。作業中も陽気な笑い声が響いている。

厨房でコンサやスタッフの女性陣とマテ茶を飲んで立ち話をしていると、男性スタッフ、それから昨日のおじさんことオーナーのエミリオが来て、なんと僕に靴とテントをプレゼントしてくれた!

朝チラッと会った時にテントを盗られた話はしたが、予想だにしなかったクリスマスプレゼントに驚いた。
どちらも中古だし靴は穴が空いていたけど、今一番必要なアイテム。有難く使わせてもらうことにした。

そしてさらに、媒体は不明だがインタビュアーの男性が来ていた。いろいろと質問されたが、スペイン語だったので知っている単語のところ以外ほとんど解らない。そこでスペイン語がネイティブで英語も少しできるコンサが間に入って通訳してくれた。

結構話したがどれくらい伝わったのか…

「Panaderia La Union(パナデリア・ラ・ウニオン)」の外観。人口2千人に満たない小さな町だが、ここだけはいつも賑わっている。

少し遅くなったが町を歩いてみることにした。

ちょうどクリスマスイブだったので店は休みのところが多い。
日本ならクリスマスといえば商売人にとっての書き入れ時というイメージだけど、こちらでは家族でゆっくりと過ごす日。
やっている店も大規模店以外はほとんど夕方までに閉まってしまう。

幸い右手に写っている精肉店はまだやっていたのでステーキ用の肉とサラミ、チーズにワインを購入。
店をやっている夫婦はフレンドリーで、娘さんが英語を話せるのも助かった。

町の小さな教会。近所を軽く歩いて部屋に戻る。

泊めてもらっている部屋の壁には、これまでここに来たたくさんの旅人たちの感謝の気持ちが残されている。

クリスマスだからか観葉植物にも電球や飾りが付けられていた。

そしてコンサからの嬉しい情報。
それによると今夜はクリスマスイブなので特別にオーナーのエミリオがディナーを用意してくれるという。
買って来た肉やワインは冷蔵庫に置かせてもらって明日食べることにした。

倉庫と隣接しているエミリオの自宅地下室。なぜかジムになっていて、ダンベル他一通りのマシンがそろっている。
普段泊めている部屋が収容人数を超えた場合、以降の旅人はここに案内される。

店の営業が終わり、23時近くからクリスマスディナーがスタート。
一般的な感覚だと遅すぎるように思うかもしれないが、アルゼンチンはもともと夕食の時間帯がとても遅い。レストランなんかでも、19時だとまだ空いていない店が多く、20時頃にやっと開店。混み出すのは22時を過ぎてからというお国柄。

料理は骨付きの大きなチキンとサラダ、パンなど。ワインもあるので食べて飲んで飲んで食べて……。
ここぞとばかりにエネルギーを補給させてもらった。

今日は朝から本当にいろいろと有難い一日。
メリークリスマスイブ。

2015.12.25

昨日一緒にディナーを頂いたカップル、そしてコンサの出発を見送る。
カップルの自転車は二人乗り用のタンデム仕様。勢いに乗ればかなりスピードが出るが、横風には弱いらしい。

僕は昨日一日ゆっくりしたお陰で痛めていた左脚もだいぶマシになっていたが、念の為もう一晩だけお世話になることにした。

今日は特にすることもないので、町から2kmほどのところにある湖まで軽く歩いてみることに。

ファグナーノ湖はアルゼンチンとチリに跨った東西に細長い湖。面積は琵琶湖とほぼ同じだがこちらの方が少しだけ小さい。
ただ湖だけと思っていたら意外にもたくさんの建物があり人がいた。有料キャンプ場に売店、バー、体験乗馬の施設、それにプールまである。

有料キャンプ場。木を組んだティピー風のにも泊れるっぽいが、テントを持ってきてる人の方が多い様子だった。

町に戻るとちょうど夕刻。昨日買って冷蔵庫に入れてもらっていた肉を焼いて今日のメインにする。

写真は本日夕方ここに着いた笑顔の素敵なフランス人、ジャン・クロード。
今夜泊るのは二人だけということで、パタゴニアで過ごすクリスマスを祝って一緒にワインを空けた。

2015.12.26

出発の朝はほんの少し雨が降っていた。
いよいよ最後の区間。ゴールのウシュアイアまではあと100kmと少し。

挨拶をと思って店舗の方に行ってみたが、残念なことにエミリオはウシュアイアに出かけているという。
応対してくれた代理の責任者っぽい人に食料としてパンとチーズを買いたいと伝えると、奥に呼んで大量に分けてくれた。

ドイツから来ているセバスチャン。彼はこの先の旅費を貯めるためにここで働いている。
僕の荷物と一緒に記念撮影。

出発。ウシュアイアよりもさらに先と表記されているラパタイア(LAPATAIA)は、町ではなく国立公園。

袋一杯にもらったパン。多すぎて入りきらないのでいくつか食べて中身を減らす。
この他に菓子パンとチーズまで用意してくれた上、代金は要らないからと一切受け取らなかった。

休憩ごとに3つ4つとひたすらパンを食べる。

途中雨がパラついてきたのでブライアンにもらったビニールシートを初めて使ってみた。
木と木を結び、その紐にビニールシートをかけて屋根にしてみる。初めてなので高さとか張り方とかいろいろ工夫の余地ありだけれど、ビニシー結構使えるかも。

雨が上がるまで長めの休憩を取って17時からまた歩きだしたものの、しばらく歩くとまたしても雨。しかも結構本格的に降ってきたので今日はここまでとテントを張ることにした。

もらったテントは Doite というこっちでは結構有名なチリのメーカーの一人用。これまでは MSR の二人用テントしか使った事がなかったので想像以上に狭く感じたが、背の低いテントなのでその分風には強そうだ。
横になったままの姿勢がちょっと辛いけどワインとサラミでチビチビとやる。

21時半頃に一度雨が止んだが、夜中にまた降りだした。
そしてこのテント。中古だったせいなのか、なんと少しずつ水が浸みてきている…!
だからと言っていまさら動くわけにもいかず、少しでも早く止むことを祈りながら一人朝を待った。

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